佐賀県伊万里市の回生薬局(かいせいやっきょく)の平野です。
上海に出張中に、日本人の中医師(ちゅういし:中国の東洋医学のお医者様)がいらっしゃるクリニックを受診させていただく体験をさせていただきました。
私たち回生薬局は東洋医学を学び実践しております。
ですから、東洋医学の本場中国で学ばせていただくことがなによりの体験になります。
教えていただいたり、聞いたりすることも多いのですが、やっぱり現地で実際に見て触れて体感することが一番です。
そういうことで…
今回の上海出張は、弊社の漢方担当のマネージャーを同行していましたので実際に受診させていただこうということになったわけです。
上海は、その歴史背景から古くからグローバルな性質をもっており、とても国際な都市です。
ですので、当然地元上海の方以外にも、海外様々な国からおみえになった外国人の方に対応する様々なビジネスも発達しています。
上海で師事している方に、海外の方がよく受診される東洋医学のクリニックをご紹介いただきました。
中国の病院 と一言にいいましても、広大な面積と様々な文化が入り乱れる中国です。
そのスタイルと方法論は様々です。
今回は、中国の中でも特に国際化が進んだ上海での一例だとご認識いただけましたら幸いです。
待合室は、僕たちのような日本人の方、それから欧米の方、さらに中東方面の方など…様々な地域の患者さんがいらっしゃってとても国際的でした。
中国における東洋医学は、中医学(ちゅういがく)と呼ばれています。
そして、中国では、お医者様の免許は日本のように一種類ではありません。
西洋医学を学ばれるお医者様の免許や、鍼灸を学ばれるお医者様の免許などがあります。
今回、診察していただいたのは、中国の東洋医学を学ばれたお医者様です。
そして、中国で医師免許を取得された日本人の方が説明のために同席してくださいました。
東洋医学の診断はすごく奥が深いのですが、環境はとてもシンプルになります。
患者さまの身体の声をしっかりいろいろな質問でお尋ねになることや、
その患者さまの顔色、声、姿勢などを観察され、
そして手の脈を診る「脈診(みゃくしん)」や
舌の状態を診る「舌診(ぜつしん)」
このような診断を個室で、丁寧に対応していただきました。
自分の今の症状について、そして養生法などについても詳しく紙に書いて説明していただきました。
症状を薬で改善するのではなく… あくまでも生活改善が第一なのです。
昨晩の深酒も、しっかりと僕の「舌」には出ておりまして… 節制するようにアドバイスいただきました。
そして、このクリニックでは、身体だけではなく「心」の悩みにもしっかり相談対応されていました。
医師の先生が中薬(生薬の組み合わせ、処方内容)を決められると
その内容にしたがって、お薬が準備されます。
上の写真は、1日分づつ、処方薬をわけている様子です。特別に写真撮影させていただきました。
今回の診断は中薬が処方されるのみでしたが、
症状や、必要に応じて、外治療(身体の外からの治療も行われます。)
そういう治療室も見せていただきました。
東洋医学がメインのクリニックですが、
西洋医学的な分析、検査などもできる設備は完備されていらっしゃいました。
このクリニックは、ヨーロッパの方が経営していらっしゃるそうです。
西洋医学と東洋医学を上手に活かしている欧米の良さがこのクリニックにもあると思いました。
さて、上の写真が今回私が受診して処方していただいた内容です。
顆粒状になった生薬のパックが複数種類、1日分づつまとめてあります。
1日分の袋をあけてみると上の写真になります。
種類が多い!…と思われるかもしれませんが… 日本の一般的な漢方の処方とは違うところがあるのです。
日本の漢方薬は、東洋医学の古典などにある処方内容が再現してあるものを使うのが一般的です。
例えば… 葛根湯 などの処方だとすると
カッコン、ケイヒ、シャクヤク、マオウ、タイソウ、ショウキョウ、カンゾウ などの複数の生薬が、古典の処方内容にしたがってあらかじめ混ぜ合わせらえれた状態で入っていますが…
今回上海のクリニックで処方していただいたものは、一つ一つのパックの中に一つの生薬成分が入っているわけです。
中医師の先生が、診断してその人に必要だと思った生薬を組み立てて処方内容を決められるのです。
一人一人オーダーメイドの組み合わせを選んでいただけるわけなのです。
これらの顆粒状の生薬を湯のみなどに入れてお湯で溶かして一日2回分服するわけです。
人によっては、「めんどうだな」って感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
でも僕は個人的に、これはとてもわかりやすく、なんてシステマティックなのだろうと感激しました。
例えば、このスタイルならば… 「途中で下痢をしたから、この生薬を調節しよう」というような事も可能ですよね。
一人一人にお薬を準備するのにもとても効率的だと思います。
通常、一週間、もしくは体調変化があったらそれよりも早くでも
患者さんは再度受診されます。
そしてその症状に合わせて、またお薬、生薬の組み合わせは変わるわけです。
特殊な疾患などのケースを除いて…漫然と同じお薬が繰り返されることはほとんどないということです。
今回、上海で実際に診断をしていただき、そして処方薬を出していただき、
自分で飲んでみて本当に色々なことを学びました。
東洋医学の大切なところはしっかりそのままに、現代人にも飲みやすく再現性の高い方法論をとっておられること
本当に勉強になりました。
日本は東洋の国ではありますが、東洋医学はまだまだ広く普及していないと感じています。
それぞれの国には、それぞれの文化があり、医療にも同じことが言えます。
どこが良いとか悪いとかそういう問題ではありません。
ただ、私たちの日本は、古来より世界に誇れる東洋文化の歴史をもつ国です。
「温故知新」とはイノベーションを意味する言葉だと思います。
日本でも大いに参考にさせていただくべき点がたくさんあると感じました。